東京都現代美術館で「坂本龍一|音を視る 時を聴く」が開催中です。
音楽家であり、アーティストとしても知られる坂本龍一の大型インスタレーションを包括的に紹介する、国内初の最大規模の本展。
坂本龍一の長年の関心ごとでとあった音と時間をテーマに、これまでの代表作から成る没入型・体感型サウンド・インスタレーション作品10点あまりを、美術館屋内外の空間にダイナミックに構成・展開しています。
時間を忘れてしまいそうになるほど、ずっと見ていれいられる作品ばかり。空いている時期にゆっくりともう一度行きたいと思える素晴らしい内容でした。
本記事では「坂本龍一|音を視る 時を聴く」について、チケットやアクセスなどの概要から、展示作品について、混雑状況や所要時間、販売されているグッズ、そして個人的な感想をまとめています。
これから行こうとしている方、行こうか検討している方の参考になれば幸いです。
展覧会の概要
会期 | 2024年12月21日(土)〜2025年3月30日(日) |
開館時間 | 10:00〜18:00 ※最終入場は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日(1月13日、2月24日は開館)、12月28日~1月1日、1月14日、2月25日 |
会場 | 東京都現代美術館 |
住所 | 東京都江東区三好4-1-1 |
チケット(入場料)
チケットの料金は以下の通りです。
- 一般:2400円
- 大学生・専門学校生・65 歳以上:1700円
- 中高生:960円
- 小学生以下:無料
本展のチケットがあれば、コレクション展の入場もできます。
チケットは当日窓口のほか、公式オンラインチケットサイトからも購入が可能です。
本展覧会の入場は日時指定制ではないので事前にチケットを購入しておく必要はありません。
同時期に開催している他の展覧会もまとめて見たいという方には、同時期開催の展覧会がお得に見られるセット券も販売されています。
所要時間と混雑状況
私は展覧会開催直後の日曜日の10時すぎに行きました。
開催直後ということもあり、かなり混んでいましたが、1作品ごとの展示スペースが広いため、そこまで鑑賞しにくいということはありませんでした。
展示室に入場して、出るまでの所要時間は1時間半くらいです。
作品数は少ないですが、映像作品が中心だということと、どれも不思議とずっと見ていられるような作品ばかりで時間を忘れて楽しむことができます。
空いていたら2時間以上かけてゆっくり過ごしたい、そんな展覧会でした。
本展覧会は写真撮影が可能です。
ただし、三脚や自撮り棒の使用、フラッシュの使用は不可です。
1部作品を除いて動画撮影も1分以内であれば可能となっています。
他ではなかなか見れない、体験できないようなインスタレーション作品ばかりなので、撮影して記録に残せるのは嬉しかったです。
展覧会の内容
音楽家・アーティストとして国際的に幅広く活躍した坂本龍一。
音楽の枠を超え、インスタレーション作品の制作や、社会問題への関与といった多彩な取り組みを通して、同時代を生きる人々に多大な影響を与えてきました。
2000年代以降はさまざまなアーティストとの協働を通じ、音を展示空間に立体的に設置する試みを積極的に思考し、実践しています。
本展覧会では、坂本が生前に描いていた東京都現代美術館での個展構想に端を発し、その先駆的・実験的な創作活動の軌跡をたどっています。
また、活動を通じて交流のあった数々のアーティストとのコラボレーションを通して、坂本が残した問いかけやメッセージ、その芸術館を提示しています。
「音を視る 時を聴く」というタイトルの通り、坂本の音楽とそこに流れる時間を、五感を通して体験できる展覧会となっています。
作品数は少ないですが、どれも時間を忘れて見ていられるようなすばらしいものです。
それでは実際に写真を中心にどのような作品が展示されているのかを紹介していきたいと思います。
企画展示室1階
坂本龍一+高谷史郎<TIME TIME>
2021年初演の舞台作品「TIME」を基に、本展のために制作された新作です。
「水」が舞台として設えられ、この作品のために高谷が新しく撮り下ろした宮田まゆみが笙を奏でる映像と、「TIME」の田中泯の映像などを組み合わせて、「TIME」に東條する三つの要素を3画面で構造しています。
坂本龍一+高谷史郎<water state 1>
展示室の中心に黒い水盤があり、大きな石を周囲に設置。
その水盤には気象衛星の全球画像から、会場を含む地域の降水量データを抽出し、一年ごとに凝縮したデータを用いて、天井の装置から雨を降らせます。
同時に水滴か水盤に作り出す波紋の変化は音に変換され、時間の経過に合わせて照明とともに微妙に変化していきます。
時に海面のようにみえたり、雨粒の落ちる水たまりにみえたりとさまざまな表情を映す姿は、自然環境の縮図のようにも見えます。
坂本龍一 with 高谷史郎<IS YOUR TIME>
2011年の東日本大震災の津波で被災した宮城県農業高等学校のピアノに出逢った坂本は、それを「自然によって調律したピアノ」として捉え作品化したものです。
水盤の上に1台のピアノが置かれており、その上には1枚のスクリーンが吊られ、静かに雪が舞い降りる映像が流れています。
大自然の営みによって一つのモノに還ったピアノが、全国各地の地震データによって音を発し、地球の鳴動を感知する装置となっています。
カールステン・ニコライ<PHOSPHENES><ENDO EXO>
「アルヴァ・ノト」名義でも知られ、アルバム制作やライブツアーで坂本と協働してきたカールステン・ニコライの作品。
本作ではジュール・ヴェルヌの空想科学小説「海底二万里」から着想を得た初の長編映画「20000」のためにニコライが書いた脚本全24章のうち、<PHOSPHENES>を<ENDO EXO>を映像化しています。
どちらも約7分の作品となっています。
企画展示室地下2階
企画展示室地下2階に移動すると、アルバム「async」の制作過程にインスピレーションを与えた書籍、写真、メモ、譜面などがまとめて展示されています。
アピチャッポン・ウィーラセタクン<Durmiente>
坂本のアルバム「async」を自分にとって私的な作品と捉えたタイの映画監督・アーティストのアピチャッポン・ウィーラセタクンによる作品。
小型カメラを自分の親しい人たちに渡して撮影してもらった映像は、粗い画面に独特の温かい色味で彼らの私的な日常が切り取られています。
坂本龍一+高谷史郎<async-immersion tokyo>
音楽を空間に立体的に設置する「設置音楽」のコンセプトに沿って、アルバム「async」の楽曲を使ったいくつかのインスタレーションを坂本と高谷は制作しています。
本作は「AMBIENT KYOTO 2023」で発表されたインスタレーションを、東京都現代美術館の展示空間に合わせて再構築されたものです。
12.2チャンネルの高性能スピーカー14台によって流れる空間に入ると、四方から音に囲まれ、正面には長さ18mの LEDウォールに、高谷による映像がリアルタイムで生成されていきます。
坂本龍一+Zakkubalan<async-volume>
映像制作に軸足を置いた活動をしている空音央とアルバート・トーレンによるユニット、Zakkubalanが坂本の制作活動の舞台裏を映像の形で表現するように依頼された作品。
暗い部屋の中には24台のiPhoneとiPadが小さく光窓のように設置。
それらには坂本がアルバム「async」制作のため、多くの時間を過ごしたニューヨークのスタジオやリビング、庭などの風景が映されており、近づくとささやかな音が聞こえてきます。
坂本龍一+高谷史郎<LIFE-fluid,invisible,inaudible…>
1999年に初演したオペラ「LIFE」を脱構築して制作した、映像と音によるインスタレーション作品。
3×3のグリッド状に配置し、天井から吊るされた9個の水槽の中に霧を発生させ、映像を投影し、両側にはスピーカーが設置されています。
霧が濃いと映像は鮮明に映り、薄い時には水槽内の水を通過して床にたゆたうように映し出されます。
庭を散策するようにゆっきりと歩きながら、従来のリニアな体験とは異なる時空間の広がり流れを体感します。
坂本龍一アーカイブ
坂本龍一の軌跡をたどる試みの一つとして、資料とテキストにAIシミュレーションを加えた会場構成によるアーカイブ展示を行っています。
「坂本龍一の思想」、「戦後アヴァンギャルドの世代」、「YMO以後のメディア・パフォーマンス」、「音楽史以後のオペラ『LIFE』」、「ポストメディアの表現へ」、「ポストヒューマンのエコゾフィー」といった6つの視点から、未刊行資料、刊行物、AIシミュレーションで構成されています。
※直筆のメモなど、一部接写禁止の作品があります。
スペシャル・コラボレーション
坂本龍一+中谷芙ニ子+高谷史郎<LIFE-WELL TOKYO>霧の彫刻#47662
1970年に大阪万博のペプシ館を、水を使った人工の霧で覆った「霧の彫刻」を手がけたことで知られる中谷芙ニ子。
多彩なジャンルのアーティストと実験的なコラボレーションを数多く実施し、2017年には坂本龍一と高谷史郎、ダンサーの田中泯とも共演しています。本店では美術館2階屋外のサンクンガーデンを霧で満たし、命の水をたたえます。
展示時間の決まっている作品で、見れるのは毎時00分/30分スタート(10:30〜17:30)、各回約10分間となります。
会場の両脇から湧き出る霧は、ぶつかり合い、対流を生み出しながら天へと舞い上がり、その動きを音へ瞬時に変換。
また、階上に設置された鏡が太陽の動きを追いながら、霧の中へその光を導きます。
霧と光と音が一体となり、刻一刻と表情を変えながら、自然への敬愛や畏怖の年を想起させるような夢幻のシンフォニーを奏でます。
今回は晴れた昼間の時間の鑑賞でしたが、太陽の光が霧で乱反射して周りが真っ白に見えるすごい体験ができました。
暗い時間ではどんな体験ができるのか、とても気になるので別の時間にも訪れてみたいと思いました。
アーカイブ特別展示
坂本龍一×岩井俊雄<Music Plays Images X Images Play Music>
1996年に水戸芸術館で初演された坂本龍一と岩井俊雄による音楽と映像のコラボレーションパフォーマンス。
坂本が弾くMIDIピアノから出力された演奏情報が、岩井のプログラムによって瞬時に映像となり、スクリーンに投影され可視化されるもの。
当時はまだ珍しかったインターネット中継を用いて視聴者と坂本のセッションを試みるなど、音楽と映像メディアを融合させるさまざまな実験を行っていました。
今回の展示では岩井の所蔵するアーカイブ資料から発掘された、97年に実際に坂本が演奏したMIDIデータとその様子を撮影した映像データから再現展示を試みています。
中庭(1階/屋外)
坂本龍一+真鍋大度<センシング・ストリームズ2024-不可視、不可聴(MOT version)>
携帯電話、Wi-Fi、ラジオなどで使用されている電磁波という人間が知覚できない「流れ(ストリーム)」を一種の生態系と捉えた作品。
今回の展示のため、屋外に16mにわたって延びる帯状のLEDディスプレイを用い、常に変貌を遂げる東京という大都市の目に見えないインフラの姿を音楽と音で描き出しています。
ミュージアムショップにはオリジナルグッズを多数販売
本展に合わせて、ミュージアムショップの奥スペースには、坂本龍一展特設ショップが開設。オリジナルグッズが多数販売されています。
Tシャツの種類がとにかく豊富。どのデザインも素敵でとても悩みます。
BABBIやFuglen Coffee Roastersなど坂本龍一が愛し逸品との展覧会コラボグッズ。
エコバッグやクリアファイル、ポストカードといった定番グッズももちろん並んでいます。
普段はなかなか手にすることができない坂本龍一に関する商品やCD、書籍なども数多く揃う貴重な機会となっています。
館内のレストランではコラボメニューも
東京都現代美術館内にあるレストラン「100本のスプーン」では展覧会コラボレーションメニューも販売されています。
ランチのコースや、デザートなど味はもちろん見た目も楽しめるメニューとなっているので展覧会鑑賞後に立ち寄るのもおすすめです。
展覧会の感想
展示作品数は少ないですが、どの作品もずっと見ていられるような不思議な魅力のあるものばかりでした。
空いているときにもう一度行ってゆっくりと展示空間に浸りたいと思えるすばらしい展覧会でした。
特にスペシャル・コラボレーション作品が印象的で、別の天気・時間帯でどういう風な体験ができるのかとても気になります。
ということで、「坂本龍一|音を視る 時を聴く」の超個人的なオススメ度は…。
★★★★☆
あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。
これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。
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