岡本太郎の史上最大規模の回顧展「展覧会 岡本太郎」が上野にある東京都美術館で開催中です。
展示されているのは<太陽の塔>や<明日の神話>などの代表作はもちろん、18歳で渡ったパリの青春時代から、アトリエで人知れず書き進めた晩年の作品群まで。
私は年に1回は川崎市岡本太郎美術館に足を運んでいるのですが、岡本太郎のまだ見たことのない作品が見れたり、知っているようで意外と知らない岡本太郎の人生の全貌が知れると思って早速行ってきました。
最大規模の回顧展ということで多数の作品を見られ、岡本太郎の創作の足取りを順に追えるようなっており、岡本太郎についてより深く知れるよい展覧会だったと思います。
また、会場は想像していた以上に混雑していて注目度の高さが窺えました。
本記事は岡本太郎展のチケットや音声ガイドなどの概要、混雑状況や所要時間、グッズなどの情報と私の個人的な感想をまとめたものになります。
これから岡本太郎展に行こうと検討している方の参考になれば幸いです。
展覧会の概要
- 会期:2022年10月18日(火)〜12月28日(水)
- 開室時間:9:30〜17:30、金曜は20:00まで ※入室は閉室の30分前まで
- 休室日:月曜日
- 会場:東京都美術館
- 住所:〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
チケットについて
岡本太郎展は展示室内の混雑を避けるため、事前購入(日時指定券)制となっています。
当日の入場枠も設けているようですが、予定枚数が終了してると入れなかったり、入場まで時間がかなりかかる可能性があるのでチケットは事前購入していくのが良いと思います。
チケット代は以下の通りです。
- 一般:1,900円
- 大学生・専門学校生:1,300円
- 65歳以上:1,400円
- 高校生以下:無料※日時指定予約必要
チケットは公式チケットサイト「ART PASS(アートパス)」をはじめ、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあなどでも購入できます。
手数料もかからず、スマートフォンに送られてくるQRコードで入場ができるので発券の必要がなく、最大2回まで日時変更ができるアートパスが個人的にはおすすめです。
(来場日の30日前から予約・購入が可能)
音声ガイドについて
岡本太郎展には音声ガイドが用意されています。
音声ガイドのナビゲーターは、俳優の阿部サダヲさん。
聴き取りやすい声で結構よかったです。
人間・岡本太郎とは何者か・・・画家の言葉を交えながら、その真の姿に迫ります。
音声ガイドは会場にて専用ガイド機をレンタルする「会場レンタル版」(600円)と、聴く美術というアプリ上で購入して使える「アプリ配信版」(iOS800円、Android730円)から選べます。
会場レンタル版の収録時間は約35分。アプリ配信版は大阪、東京、名古屋の各巡回会場限定のトラックがすべて収録されており、収録時間は約40分になっています。
また、アプリ配信版は会場以外でも視聴可能。自宅に帰ってきてから振り返ったりするのに便利です。
アプリ版を使用する際は事前にインストールをして、イヤホン・ヘッドフォンを忘れないようにしましょう。
会場の混雑状況、所要時間について
私は土曜日の11時から日時指定券を購入して行きました。
会場の東京都美術館はコインロッカー(100円返却式)がたくさんあるので荷物を預けて、トイレを済ませてから企画展示室に向かいます。
ちなみにトイレは企画展示室それぞれの階の入り口付近にもあります。
企画展示室前には列が出来ており、数分待ってから入場できました。
展示室内もなかなかの混雑具合。
写真撮影は一部の映像を除いて可能。ほとんど撮影できたと思います。
しかし、混雑からほかの鑑賞者が映らないように写真を撮るのは難しい感じで、場所によっては作品自体も見にくい箇所もいくつかありました。
そして結構作品には解説が付いています。音声ガイドいらなかったかなとも思ったり(笑)
入場から退場までは大体1時間半くらい。
写真を撮ったり、音声ガイド+作品の解説を読みながらなので早い人は1時間くらいではないでしょうか。
ここからは写真を交えて展示されている内容を順にご紹介します。
展覧会の内容
岡本太郎の創作の歴史を網羅的に紹介する本展。
東京に巡回する前に行われていた大阪展では制作年代順の構成となっていて「岡本太郎誕生ーパリ時代」「創造の孤独ー日本の文化を挑発する」「人間の根源ー呪力の魅惑」「大衆の中の芸術」「ふたつの太陽ー《太陽の塔》と《明日の神話》」「黒い眼の深淵ーつき抜けた孤独」の6章から構成されていました。
当然最初の展示室では、第一章のパリ時代の作品が展示されているのかと思いきや、はじめの展示室には時間軸やジャンルを超えて選りすぐられた作品が展示されていました。
はじめの展示室
入り口に天井からぶら下がっている<光る彫刻>をくぐって先に進むと、彫刻作品の<若い夢>が待ち構えています。
<若い夢>の先はかなり広い展示室につながっており、そこにはランダムに作品が展示されています。
この部屋には順路がなく、自由に歩き回り、作品を鑑賞します。
<森の掟>や<にらめっこ>などの絵画に
<予感>といった大型の絵画作品。
面と裏面では違う表情をしている岡本太郎初の立体作品<顔>に
掌をこちら側に向けて拒否のポーズをした<ノン>などの彫刻作品。
柱にはマスクや
時計の作品もかけらています。
展示室の対角線上には赤と青の手の立体作品が置かれていました。
ぐるっと1周見て回るだけで絵画から立体作品、そして時計などの大衆品など、岡本太郎が手掛けてきた作品の幅の広さに改めて驚きます。
展示室を出ると略年譜がありました。
岡本太郎誕生ーパリ時代
一階へ上がり、ここからは時系列に岡本太郎の創作について紹介されています。
第1章は18歳から10年間過ごしたパリ時代の作品が中心です。
初めに展示されているのは慶應義塾普通部1年の頃、ボートレースの対抗試合に敗れたことを題材に描いた<敗惨の歎き>。
そして、戦火により焼失したと思われていたパリ時代の作品と推定される<作品A><作品B><作品C>を展示。
今回が東京の美術館では初めて展示される作品です。
そして、再制作された初期作品が4点。
初めて発表した画集の表紙に素描を使った<痛ましき腕>。
赤いリボンに目がいきますが、えぐられた腕と痛みを堪えているような握り拳がとても印象的です。
この<露天>はニューヨークのグッゲンハイム美術館に寄贈して以降、日本では展示される機会のなかった作品。
中央の売り子は<痛ましき腕>と同じように赤いリボンを結んでいますが、客の方には見向きもせずに笛を吹いています。
その内省的な姿は青春の苦悩を表しているかのようです。
創造の孤独ー日本の文化を挑発する
第2章はパリから帰国し、収集を受けて中国で4年間にわたる過酷な軍務と収容所生活の中で描いた作品から展示されていました。
<師団長の肖像>は軍役時代を伝える貴重な作例です。
復員後は失われた時間を取り戻すように猛烈と活動を再開します。
<憂愁>は戦後の出発点とも言える作品。
戦争によって傷ついて全て失った岡本太郎自身の心象を伝えています。
そのほかには初めての二科展に出展した<夜>。
1954年に起きた第五福竜丸事件について描いた<燃える人>。
この作品以降、核をテーマにした作品を描くようになったそうです。
1950年前後のものと思われる貴重な自画像なども展示されています。
人間の根源ー呪力の魅惑
第3章では岡本太郎が1951年に縄文土器と出会ったことがきっかけで、これまでの日本文化の伝統に意義を唱え、人間の根源を表現するために取り組んだ作品が並んでいます。
会場にはスクリーンが3枚設置されており、そこには「藝術風土記」と題した雑誌連載の取材で撮られた写真を流しています。
日本各地の神秘的な民俗行事から、メキシコや韓国などの世界へと広がり、その足跡が写真に残されています。
この旅と前後して60年代からはうねるような動きを持った黒い線が装飾的に絵画作品に見られるようになります。
黒の線で力強く描かれた<装える戦士>。
ほぼ左右対称の構成は梵字を連想させます。この年は取材のために高野山を訪れていて、密教への関心を深めていったのだと思われています。
こちらの<愛撫>では、線たちが具体的な生き物やキャラクターに進化して画面に密度と奥行きがもたされています。
大衆の中の芸術
鮮やかでユニークな形状の椅子が置かれていたり、天井には鯉のぼり<TARO鯉>が設置された4章の展示室。
岡本太郎は公共に開かれたパブリック・アートも多く手がけるようになりました。
自身の作品をほとんど売らなかったことでも知られますが、その理由は所有されることで作品が公開されなくなるからだそうです。
岡本太郎にとって芸術とは、大衆に広く共有されるもとであり、全国70カ所以上に設置されることになる作品はまさにその実現とも言えます。
技術的に大衆と結びつく手段と考えられたモザイク・タイルにも注目していました。
この<太陽の神話>は、太陽というモチーフが初めて顔とひとつの人格を持って立ち上がり、のちの太陽の塔に通ずるイメージを形成しています。
そのほかには旧東京都庁の壁画原画や
「こどもの城」のために制作した<こどもの樹>に
東京展のみの出品となる映画関連資料などが展示されていました。
また、大衆が手に入れて使うことができるプロダクトデザインにも着手。
ユニークな作品が多数生み出されています。
この会場に置かれた<坐ることを拒否する椅子>は実際に座ることもできます。
<顔のグラス>はウイスキーのノベルティグッズとして1瓶購入したら1つ貰えたもの。
自身がCMのも出演し「グラスの底に顔があったっていいじゃないか」というセリフは流行語になったそう。
髭の描かれた水差し<水差し男爵>も同じくノベルティだったそうです。
ふたつの太陽ー太陽の塔と明日の神話
5章では岡本太郎の作品としてもっとも有名な<太陽の塔>と<明日の神話>を同時に紹介しています。
岡本太郎を象徴する2作品は同時進行で構想されていたそうです。
<太陽の塔>は50分の1スケールの立体作品を展示。
近くには塔の内部模型も展示されいます。
塔を貫く生命の樹には生命の進化の過程を辿る300の生命が取り付けられています。
来場者はそれを見ながらエスカレーターを登って塔の上まで運ばれていくという仕掛けで、人類の進歩を讃えるという万博の中心で、その正反対の人類の根源をテーマにしました。
貴重な構想スケッチなども展示されており、左右の壁面には関連映像が流されています。
私は実物をまだ見たことがないので来年こそは見にいってみたいです。
一方で<明日の神話>は、ドローイングと大きな下絵を展示しています。
元々はメキシコにあるホテルの壁画として制作されたそうです。
燃える骸骨と立ち上がるキノコ雲。原爆がテーマの作品です。
原爆を生み出してしまった悲劇を乗り越え、人類は未来を切り拓き、新しい明日の神話を紡いでいくというメッセージが込められています。
壁画の完成後、ホテルは倒産してしまい一時壁画は行方不明になりましたが、メキシコの資材置き場で発見され、日本に運ばれて修復・公開となったそうです。
帰りに渋谷駅にある実物を再確認したくなります。
黒い眼の深淵ーつき抜けた孤独
最後の6章には晩年にあたる80年代の作品を中心に展示しています。
晩年には過去作品への加筆も行われていたようで、新たな表現の創造のために挑み続けてきた芸術家の意思を感じとれます。
最後の空間には多磨霊園に眠る墓碑になっている<午後の日>に
岡本太郎が最後に取り組んだとされている作品<雷人>が展示されています。
ユニークな展覧会グッズが買えるショップも
展示室の最後にはグッズショップがあります。
図録をはじめ、ポスター、ポストカードはもちろん、ユニークな小物やファッションアイテムが多数販売しています。
最後の6章のスペースより広いので、本当にすごい種類のグッズが販売されています。
岡本太郎展らしい面白いグッズばかりなので、何を買おうか悩む時間も考慮しておいたほうがいいかもしれません。レジは常に長い列ができていました。
ちなみに帰り道には可愛い太陽の塔が帰りを見送ってくれます。
「展覧会 岡本太郎」の感想
岡本太郎の過去最大規模の回顧展。時系列に岡本太郎の歩みを知れ、絵画、立体、パブリックアートから生活用品まで初めて見る作品も多数ありとても面白かったです。
岡本太郎を知っている人も、知らない人も楽しめる内容だと思います。
かなり混雑しているのでゆっくりと作品鑑賞するなら平日か、週末ならば午前中の早い時間に行くのが良さそうです。
また、川崎にある川崎市岡本太郎美術館に行きたくなりました・・・。
ということで、「展覧会 岡本太郎」の超個人的なオススメ度は…。
★★★★☆
あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。
これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。
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