「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」——タイトルからして、いつものピカソ展とは何かが違う予感がします。
絵画の巨匠ピカソと、英国を代表するファッションデザイナーのポール・スミスが「時を超えてコラボレーション」するという、美術館では前例のない試みです。
パリ国立ピカソ美術館が所蔵する約80点の作品を、ポール・スミスが考案した空間の中で見る。
しかも今回の来日は18年ぶり。
さらに言えば、この展覧会が日本で開催されるのは国立新美術館のみ。
これは見逃せないと思い、六本木まで足を運んできました。
会期は2026年6月10日(水)〜9月21日(月・祝)。
夏から秋にかけてのロングランです。
展覧会の概要

基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 展覧会名 | ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ |
| 英語名 | Picasso, through the Eyes of Paul Smith |
| 会期 | 2026年6月10日(水)〜9月21日(月・祝) |
| 会場 | 国立新美術館 企画展示室2E |
| 住所 | 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 |
| 開館時間 | 10:00〜18:00(毎週金・土曜は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで |
| 休館日 | 毎週火曜日(8月11日は開館、8月12日は休館) |
アクセス
- 東京メトロ千代田線「乃木坂駅」6番出口(美術館直結)
- 東京メトロ日比谷線「六本木駅」4a出口より徒歩約5分
- 都営地下鉄大江戸線「六本木駅」7番出口より徒歩約4分
巡回情報
本展は2023年にパリ国立ピカソ美術館で開催されたピカソ没後50周年記念特別展「Picasso Celebration: The Collection in a New Light!」を基にした国際巡回展です。
日本では国立新美術館のみの開催となります。
チケット

| 区分 | 料金 |
|---|---|
| 一般 | 2,400円 |
| 大学生 | 1,400円 |
| 高校生 | 1,000円 |
| 中学生以下 | 無料 |
| 障害者手帳ご持参の方(付添1名含む) | 無料 |
- 7月29日(水)〜31日(金)は高校生無料観覧日(学生証要)
- オンライン購入(e-tix・アソビュー!・楽天トラベル)は手数料なし・スマホ入場が便利
- 紙チケットはセブンチケット(セブンコード:115-028)・TBSチケットで発券可
音声ガイド

ナビゲーターは女優の松岡茉優さん。
料金は700円で、会場レンタルのみの提供です(アプリ配信なし)。
ガイドを借りると解説が格段に深まるので、特にピカソを初めて体系的に鑑賞する方には強くおすすめします。
ピカソとポール・スミス——二人の「遊び心」が共鳴するまで
パブロ・ピカソ(1881〜1973)とは
20世紀美術を語るとき、ピカソの名前を外すことはできません。
スペインのマラガに生まれた彼は、幼いころから類稀な絵の才能を見せ、10代でバルセロナの美術学校に入学。
その後パリへ移り住み、「青の時代」「バラ色の時代」を経て、キュビスムという革命的な表現を切り拓きました。
ピカソが偉大なのは、ある様式を極めることで満足せず、生涯にわたって変容し続けたことです。
絵画・彫刻・陶芸・版画・コラージュ——あらゆるメディアを横断しながら、90歳を超えてもなお新作を生み出し続けました。
その総制作数は3万点以上とも言われています。
コラム:ピカソと日本の縁
ピカソと日本は深い縁があります。1958年、「ゲルニカ」をめぐる反核平和運動の高まりを受けてピカソが「平和の鳩」のリトグラフを贈ったエピソードに象徴されるように、ピカソは日本の平和運動にも共鳴し、1950年代には交流の記録も残されています。
また、国立新美術館とパリ国立ピカソ美術館の協働は2008年の「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」展以来で、今回の来日は実に18年ぶりとなります。
ポール・スミス(1946〜)とは
英国ノッティンガム生まれのポール・スミスは、10代のころプロの自転車選手を目指していました。
しかし事故によりその夢を断念し、友人たちとの出会いを通じてデザイン・音楽・ファッションの世界へ。
「ひねりのあるクラシック」という哲学を軸に、伝統的な仕立てと遊び心あふれる色使いを組み合わせたスタイルで世界的なブランドを築きました。
ピカソとスミスに共通するのは「オルタナティヴな視点」。
スミス自身は開幕にあたって、ピカソがいつも別の視点で物事をとらえていたことこそが本展の鍵だと語っていたそうです。
ちなみに、ピカソの代表作のひとつ《牡牛の頭部》(1942)は自転車のサドルとハンドルを組み合わせた作品。
サイクリストだったスミスが、この作品に特別な親しみを感じたのは想像に難くありません。
ピカソ × ポール・スミス展のポイント整理
- パリ国立ピカソ美術館のコレクション約80点が来日(18年ぶり)
- 会場レイアウトはポール・スミスが考案——まるで彼のコレクションの中にいるような空間
- 「青の時代」から晩年まで、ピカソの全キャリアを俯瞰できる構成
- 日本での開催は国立新美術館のみ(巡回なし)
- 元は2023年パリで開催されたピカソ没後50周年記念展が起源
所要時間と混雑状況
所要時間の目安
- さっと見る場合:約60分
- じっくり見る場合(音声ガイドあり):約90〜120分
- 図録を吟味しショップもゆっくり楽しむ場合:約150分以上
全16のセクション(00〜15)で構成される本展、筆者は音声ガイドなしで1時間弱で一巡できました。国立新美術館の企画展示室は天井が高く空間にゆとりがあるため、人が多くても作品に近づきにくいということはほとんどありません。

写真撮影も可能です。撮影しながら会場を回る場合は、時間に余裕をもって入館されることをおすすめします。
ただし、動画撮影は禁止となっています。
混雑状況

訪問時点ではかなり混んでいました。開幕直後ということもあり、土日祝日は相応の混雑が予想されます。
- 比較的空いている時間帯:平日の午前中10:00〜12:00、金・土の夜間開館時間帯(18:00以降)
- 混雑しやすい時間帯:土日祝日の午後、特に13:00〜16:00
- 要注意の時期:夏休み期間(7月下旬〜8月)は家族連れも増え一層の混雑が予想される
ただし前述のとおり会場が広く、混んでいても「作品の前に人だかりができて見えない」という状況は起きにくいのが救いです。
じっくり見たい作品の前で立ち止まっても、それほどプレッシャーを感じないのは、ポール・スミスが動線と空間の余白を意識して考案した恩恵かもしれません。
展覧会の様子

本展は00〜15の計16セクションで構成されています。
「緩やかな時系列」に従いつつも、ポール・スミスが各セクションに独自の色と遊び心を添えていることが、この展覧会の最大の特徴です。
00 トロンプ・レスプリ(精神を欺くもの)

まず入口に迎えてくれるのが《牡牛の頭部》(1942)。
自転車のサドルとハンドルバーという日用品をそのまま組み合わせた小さな彫刻です。
よく見れば確かにサドルとハンドルなのに、一目では本物の牛の頭部にしか見えない——この「認識の揺らぎ」こそがピカソのユーモアの真骨頂です。
自転車を深く愛するポール・スミスは、この作品に着想を得て、セクション内のレイアウトにいくつもの自転車サドルを用いました。

アートとファッション、二人の「遊び心」が最初の部屋でいきなり共鳴する、印象的な出会いです。
01 「ヴォーグ(流行)」中の芸術家

ピカソは子どものころから雑誌や漫画を愛読していた。


その好奇心は晩年まで続き、1951年の雑誌『ヴォーグ・パリ』のウェディングドレスの写真に直接描き込みを施し、その姿をユーモラスかつグロテスクに変容させました。


高級ファッション誌にいたずら書きをする——それもピカソらしい「遊び」です。


02 青の憂鬱

1901年〜1904年の「青の時代」は、ピカソが20代のころ、貧困と喪失の中で生まれた様式です。
親友カサジェマスの死が引き金となり、彼は社会の底辺に生きる人々を深い青で描き続けました。
本セクションの注目作《男の肖像》(1902-1903)は、老いた男性の表情に深い孤独と倦怠が滲む一作。
節約のために夜間のランプ灯のもとで描かれたというエピソードを知って見ると、青の色合いがさらに重く感じられます。
03 バラ色の女性たち——《アヴィニョンの娘たち》への前奏曲

1906〜1908年、ピカソはイベリア美術やアフリカ彫刻から着想を得て、バラ色を基調とした幾何学的な造形を模索し始めます。

このセクションは1907年の大作《アヴィニョンの娘たち》(ニューヨーク近代美術館所蔵)を生み出した思考過程を習作から辿る構成。

完成作は来日していませんが、それに至るまでの試行錯誤が見える習作群が、ある意味では作品以上に興味深い。

04 キュビスムの実験室

テーブル、グラス、新聞、楽器——

ピカソは日用品を主題に、複数の視点を同時に一枚の平面に収める実験を続けました。

一見するとわけがわからない抽象画のように見えますが、よく見ると必ずどこかに「手がかり」が隠されています。

そのかくれんぼを楽しむのがキュビスムの醍醐味です。

05 アッサンブラージュとコラージュ

日用品を「現実の断片」として直接作品に貼り込む(コラージュ)、あるいは組み立てる(アッサンブラージュ)。


この革新的な手法によってピカソは「絵画は現実を忠実に再現するもの」という規範を根本から崩しました。

スプーンや自転車のサドルが彫刻になる——セクション00との呼応を感じるセクションです。



06 古典主義の画家

第一次世界大戦後、芸術界には「秩序への回帰」という空気が流れました。



ピカソもそれに呼応するように、1910年代末から1920年代にかけて古典的で写実的な方法で家族の肖像を描きます。



バレエダンサーの妻オルガ・コクローヴァや息子パウロを描いた作品は穏やかで優しく、「破壊者」のイメージからは意外なほど温かみがあります。

07 子ども時代

本展の「顔」ともなっている《アルルカンに扮したパウロ》(1924)が登場するセクションです。

道化師の衣装をまとった幼い息子パウロの姿は、ピカソが生涯愛し続けたアルルカンの主題と、父親としての愛情が重なった一枚です。

サーカスや闘牛、フラメンコ——スペインの祝祭文化がピカソの想像力の根底にあったことがよくわかります。

08 闘牛

ピカソはスペイン人として、闘牛を単なる娯楽ではなく「生と死が交錯する劇場」として捉え続けました。



1930年代の作品には馬を踏みにじる牡牛の激しい場面が多く、戦争の暗雲が近づくにつれてその表現は激化していきます。


09 ストライプ

本展で最も人気を集めるであろう作品のひとつ、《読書》(1932)が登場します。
柔らかな曲線とパステル調の色彩で描かれた女性の姿は、当時の恋人マリー=テレーズ・ワルテルがモデル。
官能的な安らぎに満ちています。

一方で同じセクションには、スペイン内戦の悲劇を背景に描かれたドラ・マールの肖像も。
色彩と形で感情を語るピカソの表現力が対比として際立つセクションです。

個人的にはこのセクションで最も長く立ち止まりました。
《読書》の前に来ると、混雑していることを一瞬忘れます。

10 戦時中

1937年の《ゲルニカ》(マドリード・ソフィア王妃芸術センター所蔵)はこの展示には含まれていませんが、本セクションにはナチス占領下のパリで制作された暗い色調の静物画や肖像画が並びます。

《室内のフクロウ》(1946)には、不安と悲しみの中に生命の持続を見出そうとするピカソの意志が感じられます。


11 一点もの——陶芸の世界

1940年代後半、南仏ヴァロリスのマドゥラ工房でピカソは陶芸に没頭します。
水差し、皿、壺——日用品の形を借りて、女神、鳥、闘牛士のモチーフをユーモア溢れる方法で施した数千点に及ぶ作品。
ここには絵画や彫刻の「格式」を超えたピカソの喜びがあります。
12 《草上の昼食》

19世紀の巨匠マネの《草上の昼食》(1863)を再解釈するシリーズ。


古典の構図を完全に解体し、また組み直すことで、「伝統との対話」というピカソの創造の核心が見えます。


13 ピカソのボーダーシャツ

白髪の薄い頭にボーダーシャツ——戦後のピカソのアイコニックなビジュアルを形作ったのは、報道写真家ロベール・ドアノーによるポートレートシリーズです。

ポール・スミスのシグネチャーでもあるストライプ(マルチカラーストライプ)との共鳴から生まれたこのセクションは、ファッション好きには特に刺さるはず。

14 晩年:1969〜1972

南仏ムージャンに移り、90歳を超えてもなお猛烈な勢いで制作を続けたピカソの晩年。

筆の動きがかつてより自由になり、人物像を大胆に変形させたこの時期の作品群は、当時は低評価を受けたものの、その後の世代の画家たちに大きな影響を与えました。

衰えを知らない創造性——「まだ探求を続けている」という老芸術家のメッセージが伝わってくるようです。
15 展覧会のピカソ

1901年パリでの初個展から1970年アヴィニョンの大規模個展まで、ピカソのキャリアを彩った展覧会ポスターが一堂に集まります。


ポール・スミスが「ポスターの集積」に着想を得てデザインしたこの部屋は、会場の締めくくりにふさわしい華やかさ。

記念撮影スポットとしても人気になりそうです。

ミュージアムショップのグッズ

本展の最大の目玉のひとつが、ポール・スミスとのコラボレーショングッズです。
通常の展覧会グッズとは一線を画す、ファッションブランドらしいプロダクト感の高さが特徴。
ピカソ作品のモチーフとスミスのシグネチャーカラー(マルチカラーストライプ)が融合した商品は、普段使いでも違和感なく持てるものが揃っています。
図録

3,500円。ポール・スミスが手がけた本展の空間デザインや展示構成の意図が解説されており、作品図版と合わせて読むと展覧会の余韻がより深まります。
主なグッズ

| 商品名 | 価格(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| ピカソ作品トートバッグ(黒) | 2,800円 | ピカソ作品をあしらったシンプルデザイン |
| ペイントローラーショルダートートバッグ | 9,900円 | 黄・緑のストライプが鮮やかな大容量タイプ |
| ロゴキャンバストートバッグ | 5,500円 | 展覧会ロゴ入りのミディアムサイズ |
| ピカソ作品ステッカー | 各800円 | 6種類の作品が白地にシンプルにデザイン。携帯サイズ |
| ピカソ猫・犬チョコレート缶 | 各1,188円 | 食べた後の缶がかわいい。お土産にも◎ |

予算別おすすめピックアップ

| 予算 | おすすめ |
|---|---|
| 〜1,000円 | ステッカー(800円)、ポストカード |
| 〜2,000円 | ピカソ猫・犬チョコレート缶(1,188円) |
| 〜3,000円 | ピカソ作品トートバッグ(2,800円) |
| 〜5,000円以上 | ロゴキャンバストート(5,500円)、ペイントローラーショルダー(9,900円) |
「現地で迷ったときの参考に」——ポール・スミスの色使いにインスパイアされたグッズが多いので、会場を出た後のテンションのまま選ぶのがおすすめです。

複製版フォトリトグラフも種類が豊富だったので、家にピカソを飾りたいという方は選択肢にいれてもいいかもしれません。
まとめ・感想
こんな人におすすめ
- ピカソの名前は知っているけれど、作品を体系的に見たことがない方
- ファッションやデザインが好きで、アートとの接続に興味がある方
- ポール・スミスのブランドが好きな方(会場の空気感が彼のショップに近い)
- 美術館に一人でゆっくり時間を過ごしたい方
- 夏の六本木散歩のついでにアートを楽しみたい方
感想

実際に会場に足を踏み入れると、まず「色」の鮮やかさに驚かされます。
ポール・スミスが会場レイアウトを考案した空間は、彼のシャツのようにストライプや鮮やかな色彩が随所に使われており、「ピカソ展」の重厚なイメージとはまったく異なる軽やかさがあります。
「青の時代」の作品が暗い壁面に沈み込むように展示される一方で、陶芸のセクションは白く明るい空間——各セクションごとに壁の色も什器もがらりと変わる会場構成は、一つの展覧会の中に16の「部屋」を歩いていくような感覚です。
ポール・スミスがただ「有名人ゲスト」として名前を貸しているのではなく、本気で会場のレイアウトと空間デザインに向き合っていることが伝わってきます。
これは空間体験としても、かなり楽しめる展示です。

一方で、ピカソに興味がある方にとっての価値も非常に大きい。東京でこれだけ多くのピカソ作品を一度に見られる機会はそうそうありません。
「青の時代」から晩年の作品まで全キャリアを俯瞰できるコレクションがパリから来日しているという事実だけで、足を運ぶ理由として十分だと思います。
ポール・スミスのファンにとっても、ピカソのファンにとっても——そのどちらでなくとも——六本木の夏の午後に訪れる場所として、強くおすすめできる展覧会です。
ということで「「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」」の超個人的なオススメ度は…。
★★★★☆
あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。
これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。
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(※記事作成時の情報です。最新情報は公式サイトをご確認ください)


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