世界遺産・二条城の歴史的建造物と、ドイツの巨匠アンゼルム・キーファーの壮大な作品世界が出会う──そんな類まれな機会が、京都・二条城「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展です。
非公開の二の丸御殿台所や御清所に、戦争の記憶や神話、宗教的モチーフを内包した絵画・彫刻が静謐な空間を織り成し、訪れる者に深い内省と美の感動をもたらします。
会場を包む自然光のもと、金属や鉛、金箔などの素材が「太陽」の循環と生命の輝きを体感させる、見逃せない展覧会です。
本記事では京都・二条城で開催中の「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展について、アクセスやチケットなどの概要、所要時間や混雑状況、販売されているグッズ、そして個人的な感想をまとめています。
アンゼルム・キーファーとは
アンゼルム・キーファー(Anselm Kiefer、1945年3月8日生)は、戦後ドイツを代表する現代美術家の一人です。
ドイツ南西部ドナウエッシンゲンに生まれ、フライブルク大学で法律を学んだ後、カールスルーエ芸術アカデミーおよびデュッセルドルフ芸術アカデミーでヨーゼフ・ボイスに師事しました。
その作風は、鉛や砂、ワラ、灰、金箔などの異素材をキャンバス上に重ねることで得られる独特の物質感が特徴で、ナチスや第二次世界大戦の記憶、ギリシャ神話、旧約聖書などを主題に据えた壮大なテーマを扱います。
1980年にはヴェネチア・ビエンナーレに西ドイツ代表として参加し国際的な評価を獲得し、1999年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しました。
1992年以降は主に南フランスを拠点に創作活動を続け、世界各地で大規模個展を展開しています。
展覧会の概要
会期 | 2025年3月31日(月)~6月22日(日) |
開場時間 | 9:00~16:30(最終入場16:00) 二条城開城:8:45~17:00(最終入城16:00) |
会場 | 元離宮二条城 二の丸御殿台所・御清所等 |
住所 | 京都市中京区二条通堀川西入二条城町541 |
アクセス | 地下鉄東西線「二条城前駅」すぐ JR山陰本線「二条駅」徒歩15分 市バス9・50・101系統「二条城前」下車すぐ |
チケットについて

チケット料金は以下の通りです。
- 一般:2,200円
- 大学生:1,500円
- 高校生:1,000円
- 中学生以下:無料
このほかにも、オーディオガイド付きのチケット(2,900円)や、展覧会カタログ割引クーポンの付いたプレミアムチケット(3,500円)などもあります。
本展は日時指定予約制で、公式WEBサイトの予約フォームにて希望日時を選択のうえ購入します。
二条城の窓口(券売所)では購入できないため、必ず事前にWEB予約を行ってください 。
また、別途二条城入城券(一般800円)の購入が必要です。
二条城の入場券は窓口でも購入できますが、購入まで並ぶ可能性があるので、こちらも事前にオンラインで購入しておくことをおすすめします。
オーディオガイド(音声ガイド)について

会場受付でオーディオガイド機の貸出しを行っています 。
ガイドのナレーションは、ダンサー・演出家の田中泯氏が担当し、キーファー作品の背景や見どころをわかりやすく解説します。
オーディオガイド機の利用料金は800円(税込)です。
ご自身のスマートフォンを使い、アプリ「iMuT いつでもミュージアム・トーク」からオーディオガイドを利用することも可能です。
値段はこちらも800円です。
鑑賞にあたっての注意事項
会場となる二の丸御殿台所・御清所は木造の重要文化財のため、靴下の着用が必須です。
裸足やストッキングでは入場できないため、必ず靴下を持参しましょう。
再入場は不可で、会場内にロッカーやトイレはないため、近くの休憩所にあるロッカー、トイレを事前に利用するのをおすすめします。
作品の写真撮影・動画撮影は可能です。
ただし、フラッシュ撮影や三脚、自撮り棒などを使った撮影は不可です。
所要時間や混雑状況

私は土曜日の9:00〜の枠を予約しました。
開場前着いて9:00まで受付に並びましたが、10名程度の並びでした。
入場後もそこまで人の多さは気にならず、快適に鑑賞できました。
入場してから、退場するまでの所要時間は45分くらいでした。
次の予定があったため、早めに見終えてしまいましたが、時間があれば1〜2時間をかけても良い空間でした。
作品数は約30点がそこまで多くないので早い人であれば30分くらいで見終えられるかと思います。
展覧会の内容
本展は、二条城の中庭(庭園)、二の丸御殿台所、御清所の三つのエリアを縦断する動線で構成されています。
各エリアは「太陽(ソラリス)」を軸とし、自然光や歴史的建築の空間性を最大限に活かすサイトスペシフィックな展示計画となっています。
これにより、来場者は古の城郭とキーファーの物質豊かな作品群が織りなす対話を、順路に沿って一体的に体感できます。
展示されている作品のリストは受付でQRコードからダウンロードすることができます。
作品説明や解説などは一切ないので、必要な人は音声ガイドを利用するのがおすすめです。
ここからは写真中心に展覧会の様子をご紹介します。
会場に入り、最初に出迎えてくれるのは巨大な彫刻作品《ラー》です。

古代エジプトの太陽神を象徴する高さ約10mの巨大彫刻。
斜めに傾く鉄と鉛の翼状構造が光を受け、庭園の石畳や青空とのコントラストが神秘的な緊張感を生み出します。

靴を脱ぎ、二の丸御殿に入ります。目の前には幅約950cm×高さ380cmの大作絵画《オクタビオ・パスのために》。

多彩な素材(乳剤、油彩、アクリル、金箔、電気分解生成物、岩石、チャコール、コラージュ)を重層的に用い、詩人オクタビオ・パスへのオマージュと原爆後の焦土を宇宙的ビジョンで描きます。

土間のエリアにも白いドレスを着た彫刻作品3体と、絵画作品が2点展示されています。

《⽉のきるかさの雫や落つらん》

スチール、ガラス、絵具、鉛、木枠を用い、江戸末期の尼僧・歌人大田垣蓮月の詩に着想を得たタイトルが詩情豊かに響きます。帽子から滴り落ちるガラスの雫が、時空を超えた静寂を演出します 。
《ダナエ》


《オーロラ》

280×470cmの混合メディア絵画。乳剤、油彩、アクリル、シェラック・ニス、金箔、電気分解生成物、石膏、木、スチール、皮革、チャコールを重ね、北極で輝くオーロラの幻想的な色彩と変化を表現します 。
《アンゼルムここにありき》

作者自身の存在と時間の痕跡を示唆するタイトルが印象的です。

奥にも対となる作品があります。
反対側にはケースに入った作品群が展示されています。
《ヨハネ:光は闇の中に輝いている。闇は光を理解しなかった。》


《ウルズ、ヴェルザンディ、スクルド−ノルンたち》

《ヨハネ:光は闇の中に輝いている。闇は光を理解しなかった。》

《ミラーの法則》《ソラリス−ハリー》《パンドラ》

《モーゲンソー計画》

御清所の畳敷き空間を金色の小麦で埋め尽くすインスタレーション。
1944年に提案された「モーゲンソー計画」を想起させるこの作品は、農耕の豊穣と戦後の荒廃という二つの歴史的記憶を同時に喚起します。



隠れるように佇む金色の蛇や陶器片、本の断片が、時間の重さと詩情を伝えます 。
《ヨセフの夢》

280×470cmのキャンバスに写真、乳剤、油彩、アクリル、シェラック・ニス、電気分解生成物、チョークを組み合わせた混合メディア作品。旧約聖書の物語を下敷きに、夢と現実、言葉とイメージの狭間を探ります。
《デーメーテール》

《ダナエ》

中庭には出ることはできませんが、鉛の像が6体展示されています。

御清所からガラス越しに見ることができます。
中世の聖人像を想起させるフォルムと素朴な土の質感が、現代の視点で再構築されています。

受付からも一体だけチラッと見ることができます。
展覧会オリジナルグッズも販売

展覧会オリジナルのグッズも充実しています。
注目は京都の伝統的な家紋をアレンジした向日葵紋をあしらったアイテム。
地元工房制作の半纏(はんてん)や風呂敷には、キーファー作品から着想を得たデザインが染め込まれています 。

その他、ロゴ刺繍入りトートバッグ、同風呂敷と同デザインの扇子、折り畳み傘、和綴じノートなど、日常的に使える和風アイテムが揃っています 。

もちろん展覧会図録やポストカード、ポスターといった定番グッズも販売中です 。

会場には専用ショップがあり、展示とあわせて立ち寄れます。
なお期間限定で、群馬・ガトーフェスタ ハラダとのコラボ菓子「グーテ・デ・ロワ プレミアム」も発売中。
キーファー展特製パッケージのミルクチョコラスクは、お土産に喜ばれそうです。
展覧会の感想

キーファーの重厚で神秘的な作品群が、歴史と権威が薫る二条城の空間と見事に響き合う「ソラリス」展。
空を仰ぐ巨大彫刻や金箔煌めく大画面、そして自然光に映える廃材のオブジェなど、他では味わえないダイナミックな体験ができます。
戦後80年、ドイツと日本の共通史を問い直す意義深いテーマも込められた本展。
見どころを思い返しつつ、ぜひ足を運んでキーファーの世界に浸ってみてください。
ということで、京都・二条城で開催している「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展の超個人的なオススメ度は…。
★★★★☆
あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。
これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。
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