現代のストリートで表現を続ける注目のアーティスト「バンクシー」。
その軌跡をたどる展覧会「バンクシーって誰?展」が寺田倉庫G1ビル(東京・天王洲)で開催中です。
プライベートコレクター秘蔵のオリジナル作品が展示されているほか、バンクシーの代表する作品とその実際の街並みが実物大で再現。
ほとんどの作品が撮影可能。バンクシーの作品を見るために世界中を旅しているかの気持ちになれる新感覚没入型展示スペースとなっています。公式アンバサダーは俳優の中村倫也さんが務め、音声ガイドにも注目です。
私は昨年横浜で開催されていた「バンクシー展 天才か反逆者か」を見に行っています。そこでバンクシーの作品に込められた思いなどを知り、感銘を受けていました。
この展覧会はバンクシーの作品とその街並みが実物大で再現されているという点に惹かれ、さらに深くバンクシーのについて知れるのではないかと思い、早速行ってきました。
本記事は「バンクシーって誰?展」について、「チケット」「アクセス」などの概要に加え、「混雑状況」や「所要時間」、そして私なりの感想をまとめたものになります。
バンクシーとは
イギリス・ブリストルで活動を開始したストリート・アーティスト。
バンクシーの作品は型紙を切り抜いて、その空いた部分にスプレー塗料を吹き付けて絵を描く「ステンシル」という技法が使われています。壁などの公共物への落書きは、本来犯罪となってしまうため、すばやく落書きを描くための方法として使っているそうです。
逮捕されないために顔は公表されていない謎のアーティストですが、バンクシーが作品を投下された場所は観光地と化し、作品がオークションに出品されれば考えられないような高値が付くほどの影響力を持っています。
公共物に描いた作品には消されたり、壊されたりして今は残っていないものも多いです。今では見ることができない作品も再現し、展示されているのが本展覧会の魅力でもあります。
バンクシーって誰?展の開催概要・アクセス・チケット
開催概要
- 展覧会名 バンクシーって誰?展
- 会期 2021年8月21日(土)~2021年12月5日(日)
- 会場 寺田倉庫 G1ビル
- 開館時間 11:00~20:00 (金・土・祝前日は21:00まで) ※最終入場は閉館時間の30分前
- 休館日 10/5(火)、10/12(火)、10/19(火)
東京での開催が終わったら、名古屋、大阪など全国へ巡回していくようです。
アクセス
会場 寺田倉庫G1ビル
住所 〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-4
・りんかい線「天王洲アイル駅」 B出口より徒歩4分
・東京モノレール羽田空港線「天王洲アイル駅」南口より徒歩5分
チケット
土日祝は入場時間が①11:00~15:00/②15:00~20:00(※金・土・祝前日は21:00)に分かれています。指定時間内はいつでも入場できます。※最終入場は指定時間終了の30分前まで
平日 | 土日祝 (日時指定) | |
一般 | 2,000円 | 2,200円 |
大学・高校生 | 1,800円 | 2,000円 |
中学・小学生 | 1,300円 | 1,500円 |
会期中に限り当日のみ有効のチケット販売を予定しているそうですが、来館時に予定枚数が終了している場合があるので、公式サイトでは事前にプレイガイドでのご購入を推奨しています。
音声ガイド引換券
展示会アンバサダーの中村倫也さんの音声ガイドも注目です。
個人的にはバンクシーの作品を見るには音声ガイドによる解説は必須だと思っています。解説でバンクシーの作品に込めたメッセージを理解することで、作品を見る視点が変わり、より楽しむことができるからです。
音声ガイドは会場でQRコードを読み取り、自分のスマートフォンで聞くタイプです。ですので音声ガイドを利用する方はイヤホン・ヘッドホンを持っていきましょう。※希望の方には会場で専用の音声ガイド機の貸し出しもしているそうです。
音声ガイドを利用するにはチケットと別に「音声ガイド引換券」の事前購入が必要です。こちらもプレイガイドから購入します。
販売方法、手数料が各プレイガイドによって違いますが、手数料のかからない「日テレゼロチケ」か「バンクシーって誰?展オンラインチケット」がおすすめ。
会場の待ち時間、混雑状況、ロッカーやトイレは
私は日曜の11:00~15:00チケットを購入。会場に着いたのは13:30頃。
会場は5階ですが、まずは2階で受付をします。
2階にはクロークがあり、荷物を預けることができます。会場にはロッカーが無いので不要な荷物はクロークで預けてしまいます。
またトイレも2階にあります。会場内にはトイレはないのでここで済ませておきましょう。
5階へはエレベーターで上がるのですが、その前には長蛇の列。列の進みは早かったので20分くらいでエレベーターに乗って5階の会場へ上がることができました。
公式の案内にもあるように11:00や15:00といった指定時間の冒頭はもっと混んでそうです。
5階に上がり、エレベーターを降りると壁一面に描かれたタイトルがお出迎え。
会場入り口に音声ガイド引換所があるので、音声ガイド引換券を渡してスマートフォンでQRコードを読み取り音声ガイドを聞きながら会場に足を踏み入れます。
2階の並びに比べて、会場内はそんなに混んでいない印象。撮影するときに人が映らないよう少し気を使いましたが、思ったよりスムーズに作品鑑賞できます。
展示内容と所要時間。印象に残った作品の紹介
本展の最大の魅力は、倉庫の特徴を利用して日テレ美術制作チームが原寸大で再現した、街並みや作品による没入空間を体験できる点です。
世界一周の旅へ出なくとも、活動の3大地域と言われるヨーロッパ、アメリカ、そして中東の街並みをこの会場で体感できます。ほとんどの作品が撮影可能で、映える撮影スポットも配置されているのでバンクシーをよく知らない人でも楽しめる内容となっております。
所要時間は音声ガイドを聞きながらゆっくり回っても1時間程度です。作品数が少ないので1つ1つの作品が印象に残りやすく、こういったアート展に行きなれていない人も疲れることなく見て回ることができると思います。
実際にどのような作品が原寸大で表現されているか写真を中心にご紹介します。
<Aachoo!!> 2020 Bristol,UK
おばあさんが入れ歯を飛ばすくらい盛大なくしゃみをしている作品。傾斜が22度もある道に描かれており、水平にして見るとくしゃみで家が傾いているように見えます。コロナ禍に描かれていることから、マスクを付けずに飛沫やウイルスを拡散することへの警鐘とも考えられます。
<Spy Booth> 2014 Cheltenham,UK
イギリスの諜報機関GCHQ近くの電話ボックスに、いかにもスパイっぽい3人組が通話の内容を盗聴する姿が描かれています。国家の監査活動を批判していると考えられています。
<London doesn’t work/I love London Robbo> 2004 London,UK
メッセージボードに「ロンドンは機能していない」とバンクシーが皮肉を込めて書いていましたが、ある日ストリートアーティストのキング・ロボに「I♡LONDON」というダサいメッセージに書き換えられました。上書きには上書きをとバンクシーとロボの応酬は数年に及びました。
バンクシーがよくモチーフにするネズミ。会場にはネズミのシルエットの影や、人形をいくつか見かけます。
<Girl with a Pierced Eardrum> 2014 Bristol,UK
フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」の耳飾りを黄色い警報器で代用した作品。2020年4月に医療用マスクが描く加えられているのが見つかりました。その後、バンクシーが医療従事者に感謝を込めて作品を贈ったニュースが報じられるも、このマスクはバンクシー本人が描き加えたのかは不明です。
<Whitewashing Lascaux(The Cans Festival)> 2008 London,UK
この作品は合法的に描かれたものですが、すでに誰かに消されて見ることができなくなっています。グラフィティはまさに路上で自由に変化を続ける生きたアートと言えますね。
<Les Miserbles> 2016 London,UK
ミュージカル「レ・ミゼラブル」のポスターを元にしたパロディ作品。催涙ガスの煙に包まれて泣いています。フランス、カレーの難民キャンプで催涙ガスが使われたことへの抗議として描かれたものです。
<Hammer Boy(Better Out Than in)> 2013 New York,USA
実際の消火栓をハンマーで叩き割ろうとしている少年が描かれた作品。現在も人気の撮影スポットになっているそうです。本展覧会でもハンマーの下に頭を入れたり、色々なポーズで写真を撮っている人がいる人気の作品でした。
<Barely Legal> 2006 Los Angeles,USA
英語で「部屋に象がいる」とは、「明白な問題について、誰も触れようとしない」という意味。世界では貧困が蔓延しているのに、結局誰も本気で救済しようとしていない皮肉を込めて、アメリカの個展で本物のインド象をペイントして展示したそうです。
<The Walled Off Hotel> 2017 Bethlehem,Palestine
イスラエル政府が築いた高さ8メートル、全長700キロにも及ぶ分離壁の目の前に、バンクシーがあえて建てた「世界一眺めの悪いホテル」。世間の目を少しでもパレスチナ問題に向けさせ、その不条理を実感してもらうためにつくられました。部屋の窓から見える分離壁には、パレスチナ人隔離政策に対する抗議や平和への願いを込めたグラフィティが見えます。
<Flower Thrower> 2005 Bethlehem,Palestine
火炎瓶の代わりに全力で花束を投げる人物が描かれた、高さ5メートルとかなり大きな作品。長年パレスチナ問題に関心のあったバンクシーが、憎しみと暴力の連鎖ではなく「愛こそが平和をもたらす」という、忘れてはならない人類の共通課題をメッセージとして込めて描きました。
<Giant Kitten> 2015 Gaza,Palestine
SNSではガザの悲惨な現実より、子猫の写真ばかりが見られていると廃墟化したガザ地区北部のベイトハヌーンに描かれた猫の壁画。世間の注目を集まるためにバンクシーはこの絵を描くと、たちまち国際的な支援団体がこの地区の人々の援助に名乗り上げたそうです。
<Bullet-Proofed Dove> 2005 Bethlehem,Palestine
平和の象徴であるはずの鳩が防弾チョッキを着ていますが、すでにロックオンされています。目の前にあるのはイスラエル軍の監視塔。旧約聖書にはオリーブの枝をくわえて戻ってくるという場面がありますが、イエス・キリストが生まれた街で、聖書の物語とリアルな現実が残酷に交差しています。
<The Son of a Migrant from Syria> 2015 Calais,France
描かれているのはアップルの創業者であるスティーブ・ジョブズのようです。フランス、カレーの難民キャンプに描かれました。あわせてバンクシーは「難民は国のお荷物というけれど、ジョブスはシリア難民の息子で、その昔アメリカがジョブスの父親を受け入れたから、年間70億ドルもの税金を払うアップル社ができた」という声明も発表しました。
<Girl with Balloon> 2002 London,UK
ロンドンのウォータールー橋のたもとの階段に描かれた作品。約1億5千万円で落札が決まったとたん、シュレッダーが作動して切り刻まれたことで有名になった風船と少女の絵です。現在は残っていないですが、誰かが「THERE IS ALWAYS HOPE(いつだって希望はある)」と書き加えたことで、一層深みを増し、人々の心に焼き付けられました。
プライベート・コレクター秘蔵のオリジナル作品にも注目です。
この絵はあのポール・スミスが所有しているものみたいです。
バンクシーを代表する「Love is in the Air」。オークションではかなり高値がつけられる人気の作品です。
背景に使用したのはガスマスクを装着したエリザベス女王の切手。
作品数は「バンクシー展天才か反逆者か」に比べると少ないですが、なかなか実物を目にすることができない貴重な作品もいくつか展示されておりました。
グッズも豊富に販売
2階に戻るとグッズショップで図録をはじめとしたオリジナルグッズを購入することができます。
アパレルからフード、文房具やアクセサリーなど幅広いグッズが販売されておりました。はコップのフチ子の限定品が個人的にはちょっと気になりました。
公式サイトでも商品の紹介がされていますので、気になる方はチェックしてみてください。
バンクシーって誰?展の感想
「バンクシーって誰?展」は実際の街並みと合わせて作品を実物大に再現することによって、今までにない没入感の得られる展覧会でした。
注目されている展覧会のため、多少混雑はしますが1時間程度で見て回れ、写真映えするポイントで撮影しながら、バンクシーの作品に込めた意図などを知ることができます。
作品数は少ないので物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、まだバンクシーについてそんなに知らないという人にはおすすめの展覧会だと思います。
逆にバンクシーをよく知っている人や「バンクシー展 天才か反逆者か」に行った人は、作品数が少ないので少し物足りないと感じるかも?
ということで、「バンクシーって誰?展」の超個人的なオススメ度は…。
★★★☆☆
あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。
これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。
Instagramで記事の告知を行なっていますので、よかったらフォローお願いします。
コメント