ヨーロッパ最大級のアーバン・アート作品を所蔵する美術館であるMuseum of Urban and Contemporary Art、略して「MUCA」のコレクションを紹介する展覧会が六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中です。
昨年大分、京都と巡回し、この3月から東京で開催となった本展では、バンクシーやKAWSといったアーティストら10名の作品や活動を取り上げており、日本初公開の作品を含めて約70点紹介しております。
本記事では森アーツセンターギャラリーで開催中の「MUCA展」について、アクセスやチケット、音声ガイドなどの概要に、所要時間や混雑状況に会場で販売されているグッズ、そして個人的な感想をまとめております。
展覧会の概要
タイトル | テレビ朝日開局65周年記念 「MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art ~バンクシーからカウズまで~」 |
会期 | 2024年3月15日(金)〜6月2日(日) |
休館日 | 会期中無休 |
開館時間 | 日〜木:10:00〜19:00 金・土・祝日・祝前日・GW:10:00〜20:00 ※最終入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 森アーツセンターギャラリー |
住所 | 東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー 52階 |
チケットについて
チケットの価格は以下の通りです。
平日 | 土日祝日 | |
一般 | 2,400円 | 2,600円 |
高校生・大学生 | 1,700円 | 1,900円 |
小学生 | 1,000円 | 1,200円 |
未就学児 | 無料 | 無料 |
チケットは1時間毎の日時指定制です。事前でオンラインで購入できますし、当日六本木ヒルズタワー3階にある美術館・展望台チケット/インフォメーションにて購入できます。
オンラインでの購入は「イープラス」、「森アーツセンターギャラリー」で受け付けております。
音声ガイドについて
本展覧会には音声ガイドが用意されております。
音声ガイドのナレーターは声優の木村昴さんが務めております。また、東京会場では東京会場限定の作品があり、スペシャルトラックが追加。その限定作品のガイドは俳優の水上恒司さんがナレーターを務めています。
音声ガイドはご自身のスマートフォンを使用し、アプリ「Art Sticker(iOS/Android)」から購入できます。
販売価格は480円。配信期間は展覧会の会期と同じです。
コンテンツ数は40個と十分なボリューム。ご利用される方はヘッドフォンなどをお忘れずに。
アーバン・アートと現代アートに特化した美術館「MUCA」とは
「MUCA」はMuseum of Urban and Contemporary Artのことを差します。2016年にクリスチャンとステファニー・ウッツによってドイツ初のアーバン・アートと現代アートに特化した美術館として開館されました。
ミュンヘンの中心部、マリエン広場からすぐの変電所跡地に所在し、アーバン・アートや現代アートにおける20、21世紀の最も有名なアーティストの作品を展示しています。
開館以来、MUCAはこの分野での作品収集の第一人者として知られており、都市の景観を作品の一部として主に収蔵。
現在では1,200点以上のコレクションを誇り、ヨーロッパでも最も重要なアーバン・アートと現代アートコレクションの一つとして認められています。
アーバン・アートとは
アーバン・アートは、現代の都市空間、例えば建物の壁や道路、橋などの公共の場所にアートを描き、発達していった視覚芸術をさしています。
グラフィティ・アート、ストリート・アート、ポスター・アート、ステンシル・アート、モザイク・アートなど、さまざまな種類があります。
アート作品が都市の景観を変え、そこで生活する人々への心へ訴えかけ、時には政治、社会的なメッセージを伝えます。
所要時間に混雑状況
私は土曜日の14時からの枠を予約して行きました。
会場入り口では少し並びがありました。
入場の際の注意としては、会場へはカバンの持ち込みが禁止となっています。
コイン返却式の無料ロッカーがあるのでそちらに荷物を預けてから入場します。
会場内は結構混雑しておりますが、展示スペースが広いのでそこまで作品鑑賞時にストレスになることはありませんでした。
写真撮影も可能でしたので、貴重な作品をいっぱいカメラに収めることができました。
入場してから会場を出るまでの所要時間はだいたい1時間半程度。早い人なら1時間かからないくらいでサクッと見れそうです。
会場の様子
ここからは実際に会場にどのような作品が展示されているのか写真中心に紹介して行きたいと思います。
KAWS
まず一番最初に紹介されているのがニューヨークのブルックリンを拠点に活動するアーティスト「KAWS(カウズ)」です。
カウズを代表する彫刻作品「コンパニオン」シリーズから<4フィートのコンパニオン(解剖されたブラウン版)>が来場者を出迎えます。
フェンスのような仕切りがある小部屋にはこのアイコニックなフィギュアが入っていたのでは無いかと思われる箱が散乱していました。
次の広い展示空間には壁に平面作品、中央には小さなブロンズ像がケースに入って展示されています。
この12体の彫刻作品は2010年以降に大規模なパブリック・インスタレーションとして各地に出没したカウズのキャラクター作品を記念として制作されたものです。日本でも富士山の近くに出没したのが記憶に新しいです。
カウズ作品に頻繁に登場する大きな耳とクロスボーンの顔が特徴的なキャラクター「チャム」。
この走っているようなポーズのチャムが描かれた<走る友だち>は彫刻作品として大きなサイズでも制作されています。
これらの作品もカウズの代表作で広告キャンペーンに介入し、メッセージを独自の視点から再構築したものです。
シェパード・フェアリー
続いて「シェパード・フェアリー」の紹介エリアに。冒頭には5分ほど作者を紹介する映像作品も用意されています。
スケートボードやパンク音楽と同時に、早くから芸術への情熱を育んでいったシェパード・フェアリー。
アンドレ・ザ・ジャイアントが描かれたステッカーを街に大量に貼った活動でも知られています。
そういった活動は監視社会への反抗であったりと、政治的な目的と芸術的な目的を融合させ、これら2つのコンセプトを簡潔に抽出し、イメージの本質を探求しています。
インベーダー
1970〜80年代のビデオゲームに影響を受け、世界中の都市の壁にピクセルアートを制作する匿名のストリート・アーティスト「インベーダー」。
こちらはモザイク・タイルを使った作品に見えますが、実はルービック・キューブを使用しています。
また、キャラクターが描かれた作品を宇宙空間へ打ち上げたり、宇宙飛行士がインベーダーの作品を国際宇宙ステーションに持ち込むなど、地球上での活動に飽き足らず、宇宙を見据えた活動も行っています。
スウーン
今回紹介される10名のうち、唯一の女性アーティストである「スウーン」は20年以上にわたり都市に作品を残してきています。
プリント制作工程の知識が豊富で、小麦粉と水でできたペーストを使って絵や写真を壁に貼っていく手法を用いて街中にポートレイトを描くことで注目を集めてきました。
人々が体験する出来事を掘り下げ、感情や人間関係、そして環境とのつながりを探究しています。
ヴィルズ
世界中の壁で自身の作品を完成させてきた「ヴィルズ」。現代の都市考古学者とも称されています。
20〜40メートルもの高さのビルに爆発物を仕掛け、爆薬により表面の壁を剥がすことで、顔のイメージをつくり痛烈な大型ポートレートで公共空間に人間らしさをもたらしてきました。
ドアや広告の紙や金属を使ったものなど、さまざまな素材を使い生み出された作品は圧巻でした。
リチャード・ハンブルトン
ストリート・アートのゴッドファーザーと呼ばれている「リチャード・ハンブルトン」。
ニューヨークの庭や路地に黒い人影を描いて人々を驚かせました。
同時代のアンディ・ウォーホルやバスキアともともに活動していたそうです。
影に潜むシルエットを荒いタッチで描き、公共の街並みという制約の中でコンセプチュアルな作品群は、ハンブルトン自身のイメージと密接に結びつき、最終的には彼自身が「シャドウマン」というニックネームで呼ばれることとなりました。
バリー・マッギー
アメリカ出身のアーティスト、「バリー・マッギー」。1980年代のサンフランシスコにおけるグラフィティ・シーンの中心人物で、ツイストやフォンという名前で作品を制作していました。
初期のパブリック・アートは都市環境で生きる上でのプレッシャーを避難する作品が多く、憂鬱な印象に裏打ちされています。
拾った物やリサイクル素材を取り入れることも多く、バリー・マッギーのスーパーフラットな作風を表しています。
JR
社会的関心を集める写真プロジェクトで国際的な評価を獲得している「JR」。日本でも六本木アートナイトや水の波紋展2021などで顔写真を大きく出力して貼るという<INSIDE OUT PROJECT>をしていたのも記憶に新しいです。
17歳のときにパリの地下鉄で1台のカメラを拾ったことがきっかけで、街の壁や建物などに写真を貼る「ペースティング」の表現を確立。
ドキュメントカメラマンとしての腕を生かし、さまざまな作品を発表してきました。
この写真に映る青年は銃のようにカメラを構えていますが、時にカメラは武器と同じような力を持つことを示唆しています。
オス・ジェメオス
ブラジルのサンパウロ出身のグスタボとオターヴィオ・パンドルフォの双子の兄弟アーティスト「オス・ジェメオス」。
1980年代のニューヨークのヒップホップやグラフィティ・カルチャーに触発され、さまざまなキャラクターや文化的影響を盛り込み、夢からインスピレーションを受けたような大規模な壁画を描き始めました。
2人が同時に作業する時はお互い会話せず、意思がつながっているように、驚く早さで作品を仕上げていくそう。
世界を通じて陽気で唯一無二のスタイルを築き上げた彼らの作品は,見る者の想像力に直接訴えかけてくるようです。
バンクシー
最後に紹介されているのが世界的に有名でありながら、正体不明のまま活動しつづけるアーティスト「バンクシー」です。
今回の展覧会の目玉といってもいい作品<アリエル>。
これはイギリスで企画された子供には相応しくないファミリー向けテーマパーク「ディズマランド」のために作られた作品。
そのほかにもバンクシーの絵で一番大きな油彩作品<アー・ユー・ユージング・ザット・チェア その椅子使ってますか?>
ヨーロッパの密入国斡旋業者が配った浮力がまったくないライフジャケットの切れ端を用いて作られた<ウェルカム・マット>
胸像の額中央に弾痕を埋め込んで、伝統芸術に風穴を開けるという意味を込めた<ブレット・ホール・バスト>
オークションの最中に制作された作品として世界中でニュースとなった<風船のない少女>など、全17作品、すべて音声ガイド付きで展示されております。
会場の最後には特設グッズショップ
バンクシーのエリアを抜けると、特設のグッズショップがあります。
紹介されている10名のアーティストのグッズがあるかと期待していましたが、置いている商品はMUCA展の図録にMUCAのトートバッグにTシャツなどのオリジナルグッズのみでした。
でもTシャツもトートバッグもシンプルで意外とカッコよかったです。
展覧会の感想
バンクシーやKAWSといった日本でもすでに人気のアーティストを中心に10名の活動を紹介。
都市空間での芸術表現が進化していったアーバン・アートは視覚的にも面白く、解説もしっかりとついているのでアート初心者でもわかりやすい展覧会だと思います。
大型の彫刻作品などはもシンプルに感動しました。
ということで、「MUCA展」の超個人的なオススメ度は…。
★★★☆☆
あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。
これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。
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