六本木の森美術館では開館20周年を記念した展覧会「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」が開催中。
気候変動や環境問題など、すべての人類の家である地球が今日抱えている様々な課題を16ヶ国のアーティスト34人による約100点の作品を通じて問いかけています。
現代アート好きな私としてはチェックしておかなければならない展覧会だと思い、開催直後の週末に早速行ってきました。
本記事は「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」について、チケットなどの概要に、混雑状況や所要時間、グッズなどの情報、そして個人的な感想をまとめています。
これから「私たちのエコロジー」展に行こうと検討している方の参考になれば幸いです。
「私たちのエコロジー」展の概要
会期 | 2023年10月18日(水)~ 2024年3月31日(日) ※会期中無休 |
開館時間 | 10:00~22:00 ※火曜日のみ17:00まで ※ただし2024.1.2(火)、3.19(火)は22:00まで ※ただし10.26(木)は17:00まで ※最終入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階) |
住所 | 〒106-6150 東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー 53階 |
チケットについて
チケットは平日と土日祝日、そして専用オンラインサイトで日時指定をして購入するか、当日窓口で購入するかで値段が異なります。
平日
当日会場 | オンライン価格 | |
一般 | 2000円 | 1800円 |
学生(高校・大学生) | 1400円 | 1300円 |
子供(4歳〜中学生) | 800円 | 700円 |
シニア(65歳以上) | 1700円 | 1500円 |
土・日・祝
当日会場 | オンライン価格 | |
一般 | 2200円 | 2000円 |
学生(高校・大学生) | 1500円 | 1400円 |
子供(4歳〜中学生) | 900円 | 800円 |
シニア(65歳以上) | 1900円 | 1700円 |
混雑していて入場できないということはなさそうですが、オンラインサイトで日時指定券を購入するのが入場もスムーズで、当日券よりやすいのでおすすめです。
音声ガイド
本展覧会では有料の音声ガイドも用意されています。
音声ガイドのコンテンツ数は15。収録時間は30分強です。
料金は500円。オンラインのチケットサイトでは音声ガイド付きの券も販売されていますが特に安くなっている訳ではありません。
ご自身のスマートフォンで会場受付にてQRコードを読み込むタイプになっています。
元々各章ごとや作品ごとの解説は充実しているので音声ガイドは借りなくてもよいかもしれません。
会場の様子。所要時間に混雑状況
展覧会は、「全ては繋がっている」「土に還る」「大いなる加速」「未来は私たちの中にある」の4章から構成されています。
私は土曜日のお昼前の時間に行きました。空いている訳ではないですが、そこまで混雑もしていないような状況でした。
写真撮影は一部の作品を除いて可能でした。
森美術館に入場してから出るまでの滞在時間はだいたい1時間半くらい。映像作品が多く、ちゃんと全部見るなら2時間〜3時間は必要そうです。
それでは各章の様子を作品の写真を中心にサッと紹介していきます。
第1章 全ては繋がっている
最初の作品はハンス・ハーケ。社会や経済のシステムと、動物や植物などの生態系とをつなぐ視点で撮影した一連の記録写真を展示しています。
第1章では環境や生態系と人間の政治経済活動が複雑に絡み合う現実について考察しています。
続いて床一面に貝殻が敷き詰められた部屋が広がります。
これはニナ・カネルの<マッスル・メモリー(5トン)>という作品です。
この貝殻の上を歩いて次のスペースへ進みます。
貝殻はセメントなどの建材に使われますが、鑑賞者がその上を歩いて踏み砕くことでそのプロセスを体験できるという作品です。
布が何枚も垂直に吊られているこの作品はセシリア・ヴィクーニャの<キープ・ギロク>。
近くの壁には同作家作品の<不安定なもの>が展示されています。
ここからは映像作品が2つ続きます。エミリヤ・シュカルヌリーテの自然に対する文明の脆弱性を浮かび上がらせる<時の矢>。
アピチャッポン・ウィーラセタクンの<ナイト・コロニー>は、白いシーツの上に群がる虫の映像にデモの群衆の声を織り交ぜています。
ここの間の壁面に模様があったので、作品かなと思ったのですが、サスティナブルな美術館運営を模索する試みのようで、前回の展覧会の展示壁や壁パネルをそのまま利用しているだけのようでした。
第2章 土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー
第2章では、戦後、日本のアーティストが自然災害や工業汚染、放射能汚染など当時の社会問題にどのように向き合ってきたかを紹介しています。
撮影禁止でしたが50年代は岡本太郎の作品<燃える人>や、桂ゆきの<人と魚>などの絵画表現から、60年代は写真やグラフィック・デザイン、70年代は立体作品を用いた手法で抗議していきました。
同章の撮影可能な展示室には2点の大きなインスタレーション作品があります。
殿敷侃のゴミを深い穴に入れて燃やして固めた作品<山口―日本海―二位ノ浜 お好み焼き>。
よく見るとゴミがドロドロに溶けて固まっているのがわかります。
谷口雅邦の生け花のようにトウモロコシの根や実などをその表面に組み合わせ た<発芽する?プリーズ!>。
同じ空間で呼応しているかのようでとても印象的でした。
そのほかにも藤田昭子や長澤伸穂の作品などが展示されています。
第3章 大いなる加速
第3章では加速し続ける経済成長や自然破壊、人間中心主義に警鐘を鳴らす作品が並びます。
撮影不可の作品ですが、ジュリアン・シャリエールの<制御された炎>というビデオインスタレーション作品から始まります。
終わりなき経済成長の破壊的エネルギーのメタファーとして読み取れるのですが、かなり没入感のある映像作品でとても良かったです。
次の展示室には海のように真っ青な部屋に白い大きな玉が浮かんでいます。
こちらはモニラ・アルカディリの<恨み言>。
実は真珠を表していて、養殖真珠と石油産業の歴史を通して、人間の自然への介入と搾取、人間と自然の共存について考えさせる作品となっています。
暗い展示室に照らされるランプと黒い石のようなものが並ぶインスタレーション作品は保良雄の<fruiting body>。
自然が長い時間をかけて作り出す大理石と、産業廃棄物を高温溶解させることで生じた人工的な非晶体であるスラグを用いて地層を作り出しています。
通路の壁に描かれた、一見シミのようにも見えるのもダニエル・ターナーの新作です。
そしてアリ・シェリの映像作品<人と神と泥について>でこの章は締め括られます。
第4章 未来は私たちの中にある
最後の章となるここでは、自然や環境自体が備え持つ美しさや共生性に注目し、人間との新しい関係を模索していきます。
まずはエコロジーを題材とした作品を発表してきたアグネス・デネスの作品が紹介されています。
人工大理石テラゾの床と藍染の布の垂れ幕で構成されるケイト・ニュービーの<ファイヤー‼︎‼︎!!!>。
西條茜の、陶作品の空洞に着目しそこに息を吹き込むことで身体や内臓感覚を拡張させる作品群。
南米のアマゾンの密林で1万年以上にも渡って独自の文化・風習を守り続けているヤノマミ族出身アーティストのドローイング群。
マルタ・アティエンサの<漁民の日2022>。
言葉や観念のみを表現とする「観念美術」で知られる松澤宥の作品群。
この小部屋は<私の死>という作品。部屋の中は空っぽで、入口と出口にパネルが掲出されているだけです。
イアン・チェンのAIによる作品<1000(サウザンド)の人生>。
ピエール・ユイグの彫刻作品も置かれていますが撮影不可。知覚像を作る脳の活動をfMRIスキャナーで捉え、その脳の活動パターンをディープ・ニューラル・ネットワークという人間の脳機能を模したAIに学習させ、そのパターンを元に生まれた形を無機物や有機物など様々な素材を使って彫刻にしたものだそう。
そして最後の作品がアサド・ラザの<木漏れ日>です。
この作品の上にある天窓は開館から20年の間に開閉が故障していましたが、本展開幕直前に修復されました。
それを、年齢を重ねて回復により時間を要するようになった身体に例え、修復そのものを、この場所で起こっている状況の新陳代謝として私たちに提示しています。
「MAMコレクション017 さわひらき」も必見
私たちのエコロジー展は以上で終了ですが、グッズショップを挟んだ展示室では、現実と虚構が織りなす幻想的な映像作品を国内外ので発表するさわひらきの作品が展示されています。
6チャンネルの映像インスタレーション作品<hako>。
タイトルの由来となっている心理療法の技法、箱庭療法の世界観が表現されています。
そのほかに同じ空間には夢を喰う羊を描いたドローイングと、踊り子の残像を次々に重ね合わせてゆく映像作品なども展示されています。
展覧会の感想
気候変動や環境問題など、身近なことではありますが日々忙しい生活の中ではなかなか考えさせてくれる機会がなかった私でしたが、今回さまざまなアーティストの作品を通じて改めて考えさせてくれるよい機会でした。
前回の森美術館の展覧会「ワールドクラスルーム」のようにキャッチーな作品が必ずしも多くないし、多少難解と感じることも多いかもしれませんがより多くの人に見ていただきたい内容だと思います。
ということで、「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」の超個人的なオススメ度は…。
★★★☆☆
あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。
これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。
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