松濤美術館「杉本博司 本歌取り 東下り」に行った感想。概要、混雑状況、所要時間など

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松濤美術館「杉本博司 本歌取り 東下り」に行った感想。概要、混雑状況、所要時間など アート
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渋谷区立松濤美術館で杉本博司さんの個展「本歌取り 東下り」が開催。

個人的に最も好きなアーティストの1人である杉本博司さんの個展なので開催直後の週末に行ってきました。

和歌の伝統技法「本歌取り」を援用した新作から代表作品などを展示。現代の作品と古典作品が見事に調和した杉本博司さんならではの素晴らしい内容でした。

本記事は「杉本博司 本歌取り 東下り」について、アクセスやチケットなどの概要、混雑状況や所要時間、販売されているグッズ、そして個人的な感想をまとめたものになります。

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展覧会の概要

展覧会名杉本博司 本歌取り 東下り
会期2023年9月16日(土)〜11月12日(日)
※会期中、一部展示替えがあります。
休館日月曜日(9月18日、10月9日は開館)
9月19日(火)
10月10日(火)
開館時間10:00〜18:00 
毎週金曜日は20:00まで
※入館は閉館時間の30分前まで
会場渋谷区立松濤美術館
住所東京都渋谷区松濤2-14-14

入館料(チケット)

入館料は以下になります。

  • 一般:1000円
  • 大学生:800円
  • 高校生・60歳以上:500円
  • 小中学生:100円
  • ※土日祝休日は小中学生無料

チケットはWEBなどでの事前購入はできず、当日窓口でのみとなります。

「本歌取り」とは

松濤美術館「杉本博司 本歌取り 東下り」に行った感想。概要、混雑状況、所要時間など

展覧会をより楽しむために、まずはタイトルにもある「本歌取り」について簡単におさらいしておきます。

和歌の作成技法のひとつ「本歌取り」。有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌をつくる手法です。

作者は本歌と向き合い、理解を深めたうえで、本歌の決まりごとの中で本歌と比肩、あるいはそれを超える歌を作ることが求められます。

杉本博司さんは自身の作家活動の原点とも言える写真技法を「本歌取り」と比較し、「本歌取り論」を展開してきました。

2022年には本歌取りをテーマにして「杉本博司 本歌取り―日本文化の伝承と飛翔」を姫路市立美術館で開催しました。

西国の姫路で始まり、今回は東国である東京で新たな展開を迎えることから「本歌取り 東下り」と題されました。

所要時間に混雑状態、そして会場の様子

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会場は地下1階の第1会場と2階の第2会場から構成されています。

嬉しいことに展覧会場は写真撮影が可能です。(動画は禁止)

私は開催初日の朝一番に行きました。開館前には20人弱ほど並んでいました。

決して広い展示空間ではなく、空いてる訳ではありませんでしたが、大型の作品が多く、人がうまく散らばっていたので作品は見やすかったです。

写真もとても撮りやすかったです。

音声ガイドはありませんが、解説のついている作品数も多かったです。視覚的にわかりやすい作品も多いですし、しっかり解説で情報が補えるので杉本博司さんの作品を初めて見る方でもとてもわかりやすいのではないでしょうか。

2階のエレベーターホール前には8分弱と5分の2本の映像作品が展示されており、それを全部見ても所要時間は大体1時間程度でした。

サクッと見れる人は30分くらいで出て来れるかもしれません。

それではここから実際に会場で撮影した写真を中心に展覧会の様子をご紹介します。

ネタバレしたくない人はご注意を。

第1会場

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初めてに展示されているのが<時間の間>。

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南北朝時代の作と考えられる春日厨子の中に、文字盤にシャガール風の絵を描いた古い電気時計をはめ込んで制作されたものです。

時計の針は逆回りに動いていますが、厨子の側面に設置されている鏡に映ると時計回りに見えるようになっています。

過去と未来の間を自由に往来する杉本さんの視点を表しており、まさに今回の展覧会のスタートを飾るにふさわしい作品ですね。

第1会場は3点の大きな屏風の作品が抜群の存在感を表しています。

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こちらの<狩野永徳筆 安土城図屏風 想像屏風風姫路城図>は2022年に行われた姫路展の際に制作されたものです。

杉本さんが長年に渡って探している<安土城図屏風>を思い、安土城を想像しながら撮影したそうです。

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この<富士山図屏風>は、見てすぐにピンときた人もいるかもしれませんが、赤富士としても知られる葛飾北斎の<冨嶽三十六景 凱風快晴>を本歌とした作品です。

富士山の裾野に点在する現代の明かりはデジタル処理で消し、北斎が見たであろう景色をじっくり鑑賞できるようになっています。

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屏風の大作最後の1つは美しい藤の花が目を奪うこちらの<春日大社藤棚図屏風>。

昨年の春日大社で行われた展覧会で初披露された作品です。

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展示空間の中心には室町時代に描かれたと考えられる<法師物語絵巻>が展示されています。

会期中の11月9日には、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで杉本狂言 本歌取り 『法師物語絵巻 死に薬~「附子」より』 『茸』が関連企画として上演されます。※すでにチケットは完売しているようです。

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第1会場には他にも、「フォトジェニック・ドローイング」シリーズも展示されています。

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現在の写真技術の原型である「ネガポジ法」を発明したウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットの貴重な初期写真のネガを入手し、そのネガを本歌取りして制作したシリーズです。

約180年の時を経て、タルボットの写し取った世界が表されています。

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出口付近にはスターリン、ダーウィン、デュシャンなどの顔写真を表具した<歴史の歴史東西習合図>が展示されています。

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第2会場

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2階の第2会場へ移動します。2階の会場前にはモニターが設置されており、映像作品が流されています。

芸能には「本歌取り」のように語り継がれてきた説話などを再構築したものが数多くあり、杉本さんは独自の手法や視点により、さらに本歌取りを施して新しい作品を生み出してきました。

映像作品は曾根崎心中 付り観音廻り」ヨーロッパ公演のダイジェスト映像(8分14秒)と、能楽映像作品「Noh Climax」(5分)が流されています。

2本合わせても15分以下ととても見やすく、ソファーに座ってゆっくりと作品鑑賞ができます。

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会場に入ると、暗室で印画紙に現像液を浸した筆を使い制作される「Bursh Impression」シリーズの<いろは歌(四十七文字)>が目に飛び込んできます。

ほとんど見えないほど暗くした暗室で自分自身の感覚を頼りに書かれる本シリーズ。

文字を覚える時に使われたいろは歌を書くことで、杉本さんは自身の意識の源に立ち返り、反芻することを試みています。

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同じく「Bursh Impression」シリーズの<月><水><火><狂>の4作品も展示されています。

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文字によって生み出される言葉の意味に向き合いアプローチしているのが伝わってきます。

「Bursh Impression」シリーズに挟まれて立体彫刻作品も展示されています。

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<数理模型025クエン曲面:負の定曲率曲面>

数理模型は数式によって定義される曲面を立体化したもの。抽象的な観念の形を視覚的に理解するものとして19世紀ドイツで作られました。

森美術館で開催された「ワールドクラスルーム」でも紹介されていましたが、杉本さんはこの形の不思議な美しさに魅了され作品として撮影もしています。

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この作品は現代日本の最も精度の高い工作機械を使って制作したものです。

杉本博司さんの代表作、水平線をセンターに捉えた同構図で撮り続けている<海景>シリーズ。古代人が見ていた風景を現代人も見ることは可能なのかという問いを契機に1980年より制作が始められたシリーズです。

屋外に長期展示し、防水ケースが破損したことで劣化した同シリーズの作品も展示されています。

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杉本さんは劣化・ダメージとして忌避されるこのような変化にも美を見出し、時間の経過や環境により作品の変化する様子を楽しんでいるようです。

こちらは海景シリーズの作品を、釈迦の遺骨を入れる容器である舎利容器に組み込んだ<時間の矢>。

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こちらの作品は1987年に作られたもので、杉本さんが初めて古美術と自身の作品の合体を試みたものです。

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海景作品をはじめ、軸装された作品も複数展示されています。

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デュシャンの<彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス>を本歌とした作品。この作品の一部から着想を得て、色眼鏡の検眼鏡セットも制作しています。

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左が国宝・那智滝図の面影を見たという<華厳滝図>に、刀身が欠損した鎌倉時代の三鈷剣を、現代刀鍛冶により復元したもの。

右が埋葬の日に詠まれる呪文がヒエログリフで書かれているいう<死者の書 断片>に青銅製猫の棺。

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フランス解剖学者ジャック=ファビアン・ゴーティエ・ダコティによる解剖図。

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出口なおの<お筆先>に表具を施したもの。

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こちらも代表作「ジオラマ」シリーズの一つ。中国南宋~元時代の画家・牧谿の水墨画技法を本歌とした<カリフォルニア・コンドル>。

サンフランシスコの自然史博物館、カルフォルニア科学アカデミーにあったコンドルの剥製を撮影したもので、時が止まったようなジオラマの世界に息が吹き込まれているようです。

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ソニー、東京大学、JAXAが協働した<宙景>。下にはギベオン隕石も置かれています。

となりにはU2のアルバムジャケットを軸装したものが展示されています。

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松濤美術館を設計した白井晟一の書も展示されています。

その白井晟一が晩年に手掛けた邸宅「桂花の舎」が小田原文化財団江之浦測候所がある柑橘山に移築されるということで、その移築案の模型も展示されています。

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全て紹介すると長くなってしまいますが、他にも貴重な作品が多数展示されています。

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前期(9月16日〜10月15日)と後期(10月17日〜11月12日)で一部展示替えがあるそうなので、後期にもまた足を運んでみたいと思います。

オリジナルグッズの販売

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グッズは図録とトートバッグのみの販売。

図録は「富士山図屏風」をモチーフにした通常盤(3,850円)と、姫路美術館での「本歌取り」と2冊セットにした100部限定の特装版(55,000円)が置かれています。※10月1日から先着販売

特装版の題字は杉本博司さんの手書きということで高額ですが少し気になっています…。

個人的にはポスターやポストカードが欲しかったのですが、どうやら無いようで残念でした。

尚、通常版の図録はAmazonなどで購入可能です。

銀座でも杉本博司の個展が開催中

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実は銀座のギャラリー小柳でも杉本博司さんの個展「火遊び」が開催中。

私も松濤美術館に行く前に見てきました。

今回の個展でも展示されていた暗室の中で現像液や定着液に浸した筆を駆使して印画紙に書を揮った「Brush Impression」シリーズから《火》を中心とした新作が初公開されています。

松濤美術館「杉本博司 本歌取り 東下り」に行った感想。概要、混雑状況、所要時間など
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  • 会期:2023年9月5日〜10月27日
  • 開館時間:12:00〜19:00
  • 休館日:月、日、祝日
  • 入場料:無料
  • 会場:ギャラリー小柳
  • 住所:〒104-0061 東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル 9F

「本歌取り 東下り」を見に行って、杉本博司さんの作品が好きになったら絶対に見にいった方がいいです。

私は小柳ギャラリーで初めて「Brush Impression」を見たのですが、欲しいと思うくらい好きなシリーズになりました。

とはいえなかなか買えるものではないので、松濤美術館に置いてあったポストカードで我慢します…。

ポストカードでも、額装すると結構いい感じになるんですよね。

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展覧会の感想

元々好きなアーティストの1人である杉本博司さんの展覧会。今回の展覧会は「本歌取り」という技法を軸にとらえ、過去から直近の活動を辿れる内容となっており、とても楽しめました。

1時間前後で見られるちょうど良いボリュームで、会場内の写真撮影も可能だったので初めて杉本博司さんの作品を見るという方にもおすすめだと思います。

ということで、「杉本博司 本歌取り 東下り」の超個人的なオススメ度は…。

★★★★☆

あくまで私個人の感想ですが、参考にしていただければ幸いです。

これからも少しずつアートやファッション関係の記事を書いています。

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